新鉱物みつけた!
田中陵二
地球をつくる、いわば細胞にあたるものが鉱物で、
私は大学時代から今にいたるまで、有機化学といって、
私たちが見つけた新鉱物「北海道石」は、有機鉱物といって、
「ふつうの人の暮らしからみえてくる中東」
菅瀬晶子
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裏表紙に描かれているオリーブの古木。 オリーブは平和の象徴です。 |
■ 菅瀬晶子 文(すがせ あきこ)
1971年、東京都新宿区出身。東京外国語大学を経て、総合研究大学院大学博士後期課程修了。2011年より、国立民族学博物館に所属。1993年以来、パレスチナ・イスラエルに関わりつづけ、おもにキリスト教徒コミュニティの文化や、彼らがイスラーム教徒と共有する聖者崇敬について研究している。著書に『イスラエルのアラブ人キリスト教徒』(渓水社)、『イスラームを知る6 新月の夜も十字架は輝くー中東のキリスト教徒』(山川出版社)などがある。
虫を楽しむ
藤丸篤夫
チョッキリ……一般的にはあまりなじみのない名前かもしりません。たいていはオトシブミとチョッキリとして取り上げられることが多く、分類としてもオトシブミ科のオトシブミ亜科・チョッキリ亜科とされています。本などでもオトシブミがメインでそれにプラス・チョッキリという扱いが多いように思います。
今回はそのプラスのチョッキリだけをとりあげて、一部だけではありますがその生態を紹介することとしました。
チョッキリの面白さは……と聞かれたらハマキチョッキリに代表される姿の美しさと、産卵時における行動の多様性と答えますが、本当は見ていて楽しいからです。
1センチにも満たない小さな虫が、たくさんの時間をかけて自分よりはるかに大きな葉を切ったり噛んだり、折ったり、ねじったり、行ったり来たりを繰り返しながら幼虫のための巻物(揺籃)を作り上げていく様子は、驚きでありふしぎであり、感動であり。最後は、よくできましたご苦労さんと、声をかけたくなることもあります。
春は寒い冬を乗り越えた多くの生き物たちが深い眠りから目覚め、活力があふれ出す季節です。私にとっては自然を楽しみ虫を楽しむ季節の始まり。楽しむことは知ることにもつながります。
柔らかな緑に包まれた野山に出かけてチョッキリやオトシブミたちと出会い、楽しんでみようと思った方が少しでもいてくれたら幸いです。
最後になりましたが、オトシブミ・チョッキリの研究者である櫻井一彦さん。ずいぶん前のことになりますが、櫻井さんとは共著でオトシブミの本を作ったことがあります。今回は共著ではありませんが、櫻井さんの協力とアドバイスがなければ作れなかった本です。感謝申し上げます。
藤丸篤夫
1953年、東京生まれ。育英工業高等専門学校卒業後、子どものころからの昆虫好きが高じて昆虫を中心とした写真を撮るようになり、コンテスト入賞をきっかけに本格的にその道にすすむようになる。著書に『ハチハンドブック』(文一総合出版刊)、『どんぐりむし』『カラスウリ』(そうえん社刊)、『せんせい! これなあに? いもむし・けむし 』(偕成社刊)、『虫の飼いかたさがしかた』(福音館書店刊)など、「たくさんのふしぎ」には『ハチという虫』などがある。
ご飯を炊くということ
森枝卓士
1955年に九州の田舎で生まれました。この本で紹介したカマドで炊くご飯、ぎりぎりで覚えています。祖母が薪をくべて、炊いていた光景をうっすらと覚えていて、お焦げのご飯を食べた記憶がある、そんな世代です。
気がつけば、電気釜になり(そう、電気釜と呼んでいました。いつから、炊飯器と呼ぶようになったのだろう……)、いろいろと使ってきて、気がつけば米のブランドで炊き方が変わるようなものが出来ていたり。やっぱり、こっちが美味しいかと土鍋で炊くのが流行ったり。我が家だけでなく、色々と変遷があったように思います。
「ご飯を炊く」という、私たちの暮らしの中で、基本の基本のようなことが、たかだか数十年で劇的に変わったということです。
そして、それは日本だけではありませんでした。今回、主にご紹介したタイでも、事情は同じでした。1980年前後にタイに住んでいたのですが、当時は屋台の料理人が、道端で、本の中で紹介した「湯取り法」で炊いているのを見たものでした。そして、なるほど、こういう炊き方もあるのか、いや、アジアではこちらが主流なのかと知ったのでした。気がつけば、どこでも炊飯器がほとんどということになりましたけれど。
改めてあちこちの国々で買い集めた料理本を見返しても、「ご飯を炊く」ということは、あまりにも当たり前なのか、ほとんど載っていません。なので、「ご飯を炊く」という、当たり前といえば当たり前、料理の基本の基本を改めてちゃんと考えてみたいと思い、出来上がったのがこの本です。
きっと、読者の皆さんも「作ってみたい」「試してみたい」と思ってくれるはずです。そう願って作りました。
どうぞ、大人も一緒にいろいろとチャレンジしてみてください。どう炊いたが美味しいか、何を合わせたが美味しいか。一番身近な科学の実験、一番身近な食文化を楽しんで欲しいです。そして、食べるということを、考えて欲しいのです。
読者の皆さんが料理好きになってくれるだけで、著者の想いは満たされます。
そうそう。中尾佐助『料理の起源』によれば、昔の日本にも湯取り法に近い調理法もあれば、もち米を蒸したものが主食という時代もあったようです。料理は、食文化は、変化を続けているということでしょう。
さて、次の世代はどう変える?
森枝卓士
1955年、生まれ育った熊本県水俣市でアメリカの写真家、ユージン・スミスと出会い、報道写真の道を志す。国際基督教大学卒。カンボジアの内戦の取材を経て、食文化を主な取材対象とする。著書に、『食べもの記』、『手で食べる?』、『干したから……』、『線と管のない家(「たくさんのふしぎ」2020年3月号)』『人間は料理をする生きものだ』など。大正大学など多くの大学で、食文化、写真(取材、調査法)等を教えている。