*藤原さんが中学高校生時代に読んでおけばよかったと思う10冊*
石牟礼道子『あやとりの記』(福音館書店)
このみずみずしい感性は子どもこそ深く届くかもしれない。子どもたちの世界、水俣。
ブレイディみかこ『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)
読んだあと、自分のものの見方の甘さを認識して、呆然とした。衝撃の作品。
船戸与一『虹の谷の五月』(集英社)
船戸冒険譚は、いつも読む楽しさと、世界の残酷さを同時に教えてくれる。
真藤順丈『宝島』(講談社)
胸が張り裂けそうになって物語を読み終えると、沖縄の本をもっと読みたくなる。
京極夏彦『絡新婦の理』(講談社)
京極レンガ本はどれも睡眠を大量に奪う。犯人は文字通り衝撃だった。
島田荘司『奇想、天を動かす』(光文社)
ミステリーにハマったのはここから。犯人の哀しさにひたすら震える。
堀川惠子『永山則夫』(講談社)
連続殺人犯の心の奥底に、そのたどった経路に、日本近代の闇がはっきりと刻まれている。
津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)
こんな素敵な大人たちがいるんだ日本には、と思う。身寄りのない姉妹の、家庭内暴力からの逃避行の末に。
木村元彦『オシムの言葉』(集英社)
オシム。久しぶりに大人のロールモデルに出会った気がする。ユーゴの悲劇の中、本物の知性。
エリック・シュローサー『核は暴走する 上下』(河出書房新社)
震撼する。核兵器はあるだけで既にこんなにも危険だったのだ。
藤原辰史(ふじはら たつし)
1976年生まれ。京都大学人文科学研究所准教授。研究テーマは、食と農の現代史。主な著作に『ナチスのキッチン』(共和国、河合隼雄学芸賞)、『給食の歴史』(岩波新書、辻静雄食文化賞)、『トラクターの世界史』(中公新書)、『分解の哲学』(青土社、サントリー学芸賞)、『縁食論』(ミシマ社)、『農の原理の史的研究』(創元社)、『歴史の屑拾い』(講談社)、『植物考』(生きのびるブックス)など。