タカを観察してみよう!
兵藤崇之
あなたがこの絵本を読んでツミに興味を持ってくれたら、わたしはとても嬉しいです。さらにツミや猛禽類、野鳥を観察してみたいと思ってくれたら、作者冥利に尽きるというものです。でももしかすると、あなたがツミを探しに出かけても見つけられないかもしれません。そんなときのおすすめは、秋のタカの渡りの時期に、渡りの観察ポイントに行くことです。「それって、一体どこ?」バード・ウオッチングの本を調べれば、日本各地の観察ポイントのことが書いてあります。さらにインターネットも調べれば、何月何日に何羽のタカが渡ったかを、克明に記録している人達が各地にいることがわかるでしょう。
観察ポイントが一人では行けないくらい遠いかもしれません。そんなときには家族の大人に連れて行ってもらえないか、相談してみてください。有名な観察ポイントのひとつが、38~39ページの絵の愛知県の伊良湖岬です。ここは江戸時代に「鷹ひとつ見つけてうれし伊良虞埼」とあの松尾芭蕉が詠んだところです。大昔からずっと毎年タカが渡って、人がそれを観ている。ここの浜辺で10月の晴れた日に双眼鏡を持って空を眺めれば、空を舞うタカの中にツミの姿が見られるでしょう。
ただ、わたしがちょっと気がかりなのは、遠くを飛ぶ鳥を双眼鏡の視界に収めてピントを合わせるのは、初めてだとかなり難しいということです。タカを見に行く前には、近くの木に止まっている鳥を双眼鏡で見る練習をすると良いでしょう。慣れさえすれば、大丈夫。タカが旋回したときに羽や眼が光る様子まではっきり見えるようになります。
もうひとつ、見ているタカの種類や性別、年齢を判断することも難しいでしょう。その場でフィールドガイドを調べて、分からなければ詳しい人に教わるのが良いと思います。ただ中には、詳しそうなそぶりをしているけれど、間違えたことを教える人もいるので、注意が必要です。教わったことを書いておいて、家に帰ったら本当に正しいかどうか、図鑑やインターネットを使って自分で確認するのが良いと思います。そのためにも、見たタカの特徴や、時間、飛び方などを絵と一緒に観察ノートに書いておくと役にたちます。
こうしてタカを観察すると、また見に行きたくなるものです。同じ観察ポイントで同じ人にまた会ったり、違う場所でも同じ人に会ったり、初めて会う人と友達になったりして、段々、タカの観察の深みにはまっていくでしょう。詳しくて信頼できる人、仲良くなれそうな人も自然とわかってくると思います。そうなれば、もうあなたもホーク・ウォッチャー(タカを観察する人)の一員です。実は、タカを観察している人は、日本だけではなくて、アジアの各地、世界の各地にいます。同じ深みにはまった人とは、育った国や話す言葉が違っても、年齢が離れていても、不思議とすぐにわかり合えるものです。今度の秋には、観察ポイントでぜひ一緒にタカを観ましょう。
兵藤崇之
関西育ちで現在は横浜在住。小さいときから、好きなのはお絵描きとお遊戯。好きな動物は、ネコ科の猛獣と猛禽類。小学生のころから水彩画を、大人になって日本画を学ぶ。会社勤めの合間に、趣味で猛禽の保護と観察、スケッチを続けて今日に至る。ツミの観察結果は、過去に学会では報告しているが、絵本にまとめるのは今回が初めて。
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