あたりまえのようにあるもののなかに、
驚くような仕組みが隠されていることがあります。
「森の土」がそうです。
たくさんのふしぎ4月号『森の舞台うら』(松浦陽次郎 文/山村浩二 絵)では、
森の土と樹木の間にある、複雑な仕組みをわかりやすく紹介します。
本作を担当するまで、
実は担当者も森の土について知らないことばかりでした。
たとえば、木が養分を吸収することのできる土は、
どれくらいの深さまであるでしょうか?
場所にもよりますが、その深さはせいぜい20センチほど。
スコップですこし掘れば出てくるぐらいの範囲です。
もっと深くまであると思っていたのに・・・・・・
しかも、落ち葉を、動物たちと菌類がすこしずつ分解して、
動物のフンと砂や粘土などの鉱物と菌類の糸があわさって、
この薄い土の層ができるまでには、数十年以上かかるというのです。
なんと気の遠くなるような・・・・・・
文を担当した松浦陽次郎さんは、パプアニューギニアなどの熱帯から、アラスカなどの北極圏まで、
世界各地の森林と土壌を研究されています。
打合せで、こうおっしゃっていたことがあります。
「土壌を研究すればするほど、それがどれほどよくできたシステムかがわかるんです。
人間には絶対に作りだせないほど、繊細で精巧なものなんです」
ひとつの例として、メソポタミア文明のあった地域は今では砂漠地帯ですが、
文明が栄えていたころには、森林が広がっていたそうです。
しかし、人間が燃料にするために木をかりつくし、土壌がだめになり、
食料の生産もできなくなり、文明が崩壊してしまったのだとか。
たしかにあの地域の森林は数千年経った今でも戻ってきていません。
担当者は子どもの頃から、
土のなかの養分や水分を吸収するのは、木の根だけだと思っていました。
しかし、実は木の根と菌類は共生していて、
菌が根の入りこめないすきまに菌糸をのばし、
根よりも広い範囲から水や養分をはこんで、根に受けわたしているというのです。
カラスノエンドウの根が菌と共生しているというのは知っていましたが、
森の木のほとんど菌類と共生しているなんて、
世の中まだまだ知らないことばかりだと思い知らされます。
そんな森の裏側にできている精巧なシステムを
とてもわかりやすく描いたのが『森の舞台うら』です。
絵は、『くだものだもの』などの多数の絵本を執筆されてきた山村浩二さんが、
実際の森を取材して、実物から離れてしまわない絶妙なところで、擬人化して描かれています。
たとえば、24ページ。
葉が枝から離れたあとに残る「葉痕」までしっかり描かれています。
この葉痕はコナラのものです。
親しみやすい表現の絵ですが、細部にまで心をくばり、
科学的な事実もしっかりおさえてあるのです。
そろそろ芽吹きがはじまります。
森が1年でもっとも美しい季節。(だと担当者は思っています)
ぜひ『森の舞台うら』を読んで、森に出かけてみてくださいね。
森の見え方が変わっているはずです。
(K)
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