うんこ虫を食べる
2022年5月9日月曜日
6月号『うんこ虫を追え』作者のことば
舘野 鴻
2022年4月7日木曜日
5月号『地球縦断の旅 北極から南極へ』作者のことば
自分の輪郭となった長い旅
石川 直樹
2022年3月8日火曜日
2022年3月8日火曜日
4月号『家をまもる』作者のことば
こわれなかった家
小松義夫
インドネシアのスマトラ島沖、そのあたりのインド洋に浮かぶニアス島を訪れたのは30年ほど前です。北部のシワヒリ村に行ったら、あちこちに空飛ぶ円盤のような家がありました。楕円形の舟のような形のものが何本もの柱に支えられて、本当に空とぶ円盤が空中に浮かんでいるように見えました。
屋根の一部は、戦闘機の操縦席のように上に向かって開いています。窓にはガラスが入っていません。家の中がどうなっているかなと思っていたら、女の人が手まねきしてくれました。暑い中を歩いて汗をたくさんかいていたので、疲れていると思われたのでしょう。「家で休んで行きなさい」と言われました。
中に入ると、枕を投げてくれました。木の床に横になって、枕を頭に当てて天井を見ているうち、ウトウトして少し眠ってしまいました。おかげで元気になったので、窓のまわりにあるベンチのような長椅子にすわって外を見ました。外を歩く人を見ていると、まるで、船か宇宙船に乗って旅をしている気分になりました。楽しい家だなあと、深く印象に残りました。
2005年3月25日に、ニアス島で大地震が起きて甚大な被害が出ました。あのシワヒリ村の家がとても心配でした。地震のニュースから約10年たって、ニアス島を再び訪れました。あの楕円形の家が地震でこわれてしまっただろうか、と思っていました。
しかし、そんなことはなくて、家は以前と同じように建っていてうれしくなりました。村の人に話を聞くと、家は地震でびくともしなかったが、屋根の部分はこわれたと言います。でも、屋根を再びつくるのはかんたんで、費用もほとんどかからなかったのだと。屋根は最初から、いつこわれてもいいように軽い材料でつくってあるのだそうです。屋根の部分は梁の材木と屋根をささえる竹、そしてヤシの葉があればすぐにできると言っていました。地震にそなえて家をまもる工夫に感心しました。
小松義夫
1945年生まれ。東京総合写真専門学校で学ぶ。毎年企業カレンダー「地球・SUMAI」制作に関わり約35年経つ。主な著書に、『ブータン』『エジプト』『セネガル』(偕成社)、『Built by Hand』『HUMANKIND』(Gibbs Smith Publisher,USA)、『Wonderful Houses Around The World』(Shelter Publications,USA)、『地球生活記』(産経児童出版文化賞受賞)『地球人記』『世界あちこちゆかいな家めぐり』(いずれも福音館書店)。ほかに「たくさんのふしぎ」で『世界の子ども きょうから友だち』『土の家』『家をかざる』(以上、福音館書店、現在品切)のほか、『世界の不思議な家を訪ねて』(角川書店)、『僕の家は世界遺産』(白水社)、『人と出会う場所 世界の市場』(アリス館)などがある。
■「たくさんのふしぎ」のご購入方法は?
①全国の書店さんでお買い求めいただけます(お取り寄せとなる場合もあります)。②amazon、楽天ブックスなどのウェブ書店さんでもご購入いただけます。(品切れになっていたり定価より高くなっていることがありますが、小社には在庫がありますので、近くの書店さんにご注文頂ければ幸いです)
③定期購読についてはこちらをご覧ください。
2022年2月8日火曜日
3月号『都会で暮らす小さな鷹 ツミ』作者のことば
タカを観察してみよう!
兵藤崇之
あなたがこの絵本を読んでツミに興味を持ってくれたら、わたしはとても嬉しいです。さらにツミや猛禽類、野鳥を観察してみたいと思ってくれたら、作者冥利に尽きるというものです。でももしかすると、あなたがツミを探しに出かけても見つけられないかもしれません。そんなときのおすすめは、秋のタカの渡りの時期に、渡りの観察ポイントに行くことです。「それって、一体どこ?」バード・ウオッチングの本を調べれば、日本各地の観察ポイントのことが書いてあります。さらにインターネットも調べれば、何月何日に何羽のタカが渡ったかを、克明に記録している人達が各地にいることがわかるでしょう。
観察ポイントが一人では行けないくらい遠いかもしれません。そんなときには家族の大人に連れて行ってもらえないか、相談してみてください。有名な観察ポイントのひとつが、38~39ページの絵の愛知県の伊良湖岬です。ここは江戸時代に「鷹ひとつ見つけてうれし伊良虞埼」とあの松尾芭蕉が詠んだところです。大昔からずっと毎年タカが渡って、人がそれを観ている。ここの浜辺で10月の晴れた日に双眼鏡を持って空を眺めれば、空を舞うタカの中にツミの姿が見られるでしょう。
ただ、わたしがちょっと気がかりなのは、遠くを飛ぶ鳥を双眼鏡の視界に収めてピントを合わせるのは、初めてだとかなり難しいということです。タカを見に行く前には、近くの木に止まっている鳥を双眼鏡で見る練習をすると良いでしょう。慣れさえすれば、大丈夫。タカが旋回したときに羽や眼が光る様子まではっきり見えるようになります。
もうひとつ、見ているタカの種類や性別、年齢を判断することも難しいでしょう。その場でフィールドガイドを調べて、分からなければ詳しい人に教わるのが良いと思います。ただ中には、詳しそうなそぶりをしているけれど、間違えたことを教える人もいるので、注意が必要です。教わったことを書いておいて、家に帰ったら本当に正しいかどうか、図鑑やインターネットを使って自分で確認するのが良いと思います。そのためにも、見たタカの特徴や、時間、飛び方などを絵と一緒に観察ノートに書いておくと役にたちます。
こうしてタカを観察すると、また見に行きたくなるものです。同じ観察ポイントで同じ人にまた会ったり、違う場所でも同じ人に会ったり、初めて会う人と友達になったりして、段々、タカの観察の深みにはまっていくでしょう。詳しくて信頼できる人、仲良くなれそうな人も自然とわかってくると思います。そうなれば、もうあなたもホーク・ウォッチャー(タカを観察する人)の一員です。実は、タカを観察している人は、日本だけではなくて、アジアの各地、世界の各地にいます。同じ深みにはまった人とは、育った国や話す言葉が違っても、年齢が離れていても、不思議とすぐにわかり合えるものです。今度の秋には、観察ポイントでぜひ一緒にタカを観ましょう。
兵藤崇之
関西育ちで現在は横浜在住。小さいときから、好きなのはお絵描きとお遊戯。好きな動物は、ネコ科の猛獣と猛禽類。小学生のころから水彩画を、大人になって日本画を学ぶ。会社勤めの合間に、趣味で猛禽の保護と観察、スケッチを続けて今日に至る。ツミの観察結果は、過去に学会では報告しているが、絵本にまとめるのは今回が初めて。
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2022年1月11日火曜日
2月号『世界の納豆をめぐる探検』の「作者のことば」
未知の納豆ワンダーランド
高野秀行
「謎」や「未知」を求め、アジア・アフリカ・南米などに残る辺境を歩き回って早三十数年になる。自分の足と目を使って辺境にある未知の土地や民族、あるいは謎のものを探すのが生き甲斐であり、生業である。広い意味で「探検」とも言える。
だが最近、この探検はどんどん難しくなってきた。インターネットと携帯電話の普及により、世界全体が高度情報社会時代に突入、探検すべき場所やものが激減しているのだ。たいていのものはネットで検索すると、詳しい情報や画像や動画まで出てきてしまい、わざわざ現地へ行く必要もなく、それが何かわかってしまう。
これでは私の生き甲斐がなくなってしまうじゃないか。いや、それ以前に失業してしまう!! と悲鳴をあげたくなったところで、ふいに出くわしたのが納豆だった。
驚いたことに、納豆は「未知の大陸」だった。納豆はあまりにもありふれており、値段も安いので、日本を含め、どこの国でも真剣に研究されていない。値段が安い=価値がないと思われているのだ。実際、これが酒だと国や企業から予算がつくので研究は桁違いに活発になる。だから納豆に関する論文や書籍も極端に少ない。日本の納豆とアジアやアフリカの納豆を比較する人もほとんどいなかった。それが同じ「納豆」であることすら、日本人に知られていなかったほどだ。
また、アジアやアフリカの諸国では、納豆のような伝統食品はネット上の情報もひじょうに限られている。なぜかというと、ネットに情報をアップするような人は、都市部に住んでいるか若い人かのどちらかで、そういう人は納豆みたいな伝統食品の作り方など知らない。そして、納豆を自分で作っているような人は田舎に住んでいるか高齢者であり、ネットなんかやっていないのである。
そして、とどめは味と香りである。その食べ物が納豆であるかどうかは画像や動画を見てもいっこうにわからない。発酵していると言っても味噌やチーズの類いかもしれない。でも、自分でそこへ行き、匂いを嗅いで味見してみれば一発でわかる。納豆は世界中どこでも、匂いを嗅げば「あっ、納豆!」と納豆を知る人になら誰にでもわかる。食べればなおさらわかる。
このような条件が重なり、納豆は高度情報社会の現代において、まさに手つかずのワンダーランドとなっていた。私は7年もの間、この未知なる世界を探検しまくったのだが、それは本当に幸せな時間だった。今回、スケラッコさんの素晴らしい絵とともに、その探検行を読者のみなさんと共有することができ、心から嬉しく思う。
高野秀行
1966年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍中に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。モットーは「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、誰も書かない本を書く」。『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で第35回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に『巨流アマゾンを遡れ』『ワセダ三畳青春記』(ともに集英社文庫)『謎のアジア納豆』(新潮文庫)『幻のアフリカ納豆を追え!』(新潮社)など多数。
小誌のご購入方法は: ①全国の書店さんでお買い求め頂けます(お取り寄せとなる場合もあります)。 ②定期購読についてはこちらをご覧ください。
③amazon、楽天ブックスなどのウェブ書店さんでもご購入頂けます。 しかし、品切れになったり、定価(770円)より高くなったりしていることがよくあります。 刊行から約3年以内の作品は小社に在庫がありますので、恐れ入りますがお近くの書店さんにご注文頂ければ幸いです。


