虫を楽しむ
藤丸篤夫
チョッキリ……一般的にはあまりなじみのない名前かもしりません。たいていはオトシブミとチョッキリとして取り上げられることが多く、分類としてもオトシブミ科のオトシブミ亜科・チョッキリ亜科とされています。本などでもオトシブミがメインでそれにプラス・チョッキリという扱いが多いように思います。
今回はそのプラスのチョッキリだけをとりあげて、一部だけではありますがその生態を紹介することとしました。
チョッキリの面白さは……と聞かれたらハマキチョッキリに代表される姿の美しさと、産卵時における行動の多様性と答えますが、本当は見ていて楽しいからです。
1センチにも満たない小さな虫が、たくさんの時間をかけて自分よりはるかに大きな葉を切ったり噛んだり、折ったり、ねじったり、行ったり来たりを繰り返しながら幼虫のための巻物(揺籃)を作り上げていく様子は、驚きでありふしぎであり、感動であり。最後は、よくできましたご苦労さんと、声をかけたくなることもあります。
春は寒い冬を乗り越えた多くの生き物たちが深い眠りから目覚め、活力があふれ出す季節です。私にとっては自然を楽しみ虫を楽しむ季節の始まり。楽しむことは知ることにもつながります。
柔らかな緑に包まれた野山に出かけてチョッキリやオトシブミたちと出会い、楽しんでみようと思った方が少しでもいてくれたら幸いです。
最後になりましたが、オトシブミ・チョッキリの研究者である櫻井一彦さん。ずいぶん前のことになりますが、櫻井さんとは共著でオトシブミの本を作ったことがあります。今回は共著ではありませんが、櫻井さんの協力とアドバイスがなければ作れなかった本です。感謝申し上げます。
藤丸篤夫
1953年、東京生まれ。育英工業高等専門学校卒業後、子どものころからの昆虫好きが高じて昆虫を中心とした写真を撮るようになり、コンテスト入賞をきっかけに本格的にその道にすすむようになる。著書に『ハチハンドブック』(文一総合出版刊)、『どんぐりむし』『カラスウリ』(そうえん社刊)、『せんせい! これなあに? いもむし・けむし 』(偕成社刊)、『虫の飼いかたさがしかた』(福音館書店刊)など、「たくさんのふしぎ」には『ハチという虫』などがある。
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