2024年2月6日火曜日

3月号『かっこいいピンクをさがしに』作者のことば

ゆらゆらピンクへの想い

なかむらるみ 

 この本の構想は、10年ほど前からありました。すこしずつ、すこしずつ、取材をすすめようやく完成しました。
 ピンクへの想いは幼少期にさかのぼります。本編にも登場した「ももいろのきりん」を段ボールで作った思い出。お気に入りだったキキララちゃんのタオルケット。アニメキャラが描かれたピンクのビニルの靴を買ってもらえなかったこと。好きな子にあげたバレンタインのお返しのハンカチが大人っぽいピンクの花柄でうっとりしたこと。ピンクってダサいなと思っていた時代。イラストレーターの仕事を始めて、画面をピンクで塗ったときのパッっと画面が明るくなる瞬間。ピンクを軸にすると、思い出すことがたくさんあって、不思議な色だなと思っていました。  
 10年経つうちに、わたしには娘が生まれました。ピンクばかり選ぶ3歳の娘に「またピンクー?」と、おもわず嫌そうな顔をしてしまい、自分の母親がピンクの靴を買ってくれなかった複雑な気持ちもすこしわかりました。ピンクは、女の子の色だとかジェンダーの問題に引き合いにだされることが多いけれど、ただただ魅力的な色なんだと伝える絵本が作りたいと思っていました。しかし、自分こそがピンクの一側面にとらわれているのではないかなと考えさせられました。絵本の制作が進んで、ピンクへの理解も深まったころ、娘は6歳でピンクは赤ちゃんの色と言いだし、薄紫好きになっていました。
 ピンクが好きと思ったり、嫌いと思ったり、そんなゆれ動く気持ち、みなさんのなかにもありますか? そのゆれ動く気持ちにわたしは惹かれていたのかもしれません。すなおに感じる自分のきもちをだいじにしたいなとおもいます。もしそういう気持ちがみなさんのなかにもあったら、ぜひだいじにしてあげてください。  
 この本は、多くの方に聞いて教えてもらってできあがりました。載せきれなかったたくさんのご協力をいただいたみなさま、本当にありがとうございました。



丸善丸の内本店さんにて
『かっこいいピンクをさがしに』刊行記念のミニ展示を実施中
児童書売り場を出た踊り場のショーケースにて。2月いっぱい🌸
ぜひおでかけください!





なかむらるみ 
1980年生まれ。東京都新宿区在住。イラストレーター。一児の母。武蔵野美術大学造形学部、デザイン情報学科卒業。著書に『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)がある。イラストを担当した本は『おじさん酒場』(亜紀書房)『東京ふつうの喫茶店』(平凡社)など。普段は雑誌、書籍などを中心にイラストを描いている。街ゆく人を眺めること、みんなが気づいてなさそうなものを探すこと、が好きです。https://lit.link/tsumamu 


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