2019年9月10日火曜日

たくさんのふしぎ10月号『9つの森とシファカたち マダガスカルのサルに会いにいく』

日本の動物園でもおなじみのワオキツネザル。彼らの故郷はインド洋にうかぶ島国、マダガスカルです。日本で見られる「キツネザル」の種類は限られていますが、マダガスカルにはなんと100種を超すキツネザルが住んでいます。
 
  

本作で大きくご紹介するのは、「シファカ」というキツネザルの仲間です。マダガスカルの熱帯雨林、高地の森、乾燥した森や、石灰岩の針山など9つの森を、シファカを中心にサルたちを探しながらめぐります。
 


文を担当した島泰三さんは30年以上、マダガスカルのサルを調べてこられました。シファカ9種は、マダガスカルに各地に離れて生息しています。この9つのシファカを見るには、交通事情の悪いマダガスカルの奥地に入らなければなりません。しかも行けば必ず見られるものでもありません。そうして観察を続けてきたシファカと彼らのすむ森、そこにいる他のサルたちを、子どもたちにぜひとも紹介したいとの思いから、本作を執筆されました。ですから、本文はサルと森の紹介に留まらず、島さんがそれぞれの森を案内するような文章になっています。


 
絵を担当したサイエンスイラストレーターの菊谷詩子さんは、本作のためにマダガスカルを訪れ、シファカたちを取材されました。そして、森の植生や空気、サルの表情、毛並み、仕草、どれをとっても研究者の島さんが驚かれるほどの精度の絵を仕上げてくださっています。たとえばこのベローシファカの絵。この毛並みの美しい表現と躍動感は現地での取材のたまものです。
 

 
キツネザルたちの絵だけではなくマダガスカルの自然の美しさを表現するため、
絵の飾り枠にまでこだわりがつまっています。文様のように描かれているのは、すべてその森の動植物です。写真中央上に描かれているのはマダガスカル固有の肉食動物フォッサです。ネコ科の動物のように見えますが、フォッサはマングースの仲間です。


 
担当者が好きなキツネザルはジェントルキツネザルです。ハイイロジェントルキツネザルは上野動物園でも見ることができます。このサルは、猛毒の青酸が含まれている竹の子を好んで食べます。しかし、彼らがどうして毒を食べても大丈夫なのか、その謎はまだ解明されていないそうです。
 


シファカ9種とキツネザルについて、フルイラストレーションでまとめられた絵本は、世界でこの作品だけです。動物園で出会うキツネザルたちの故郷がどんなところか、思いを馳せながら読んで頂ければ幸いです。

(K)
 
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