2023年6月6日火曜日

 

6月号『光るきのこ』

作者のことば

きのこたちの役割 

宮武健仁


 山里を舞うホタルや、浜に青く光るホタルイカなどは、点滅することで暗い夜にひときわ目立ちますが、きのこは光ったり消えたりせず、目立たずにひっそりと光っています。でも光るきのこたちは、光っている数日間は、昼夜関係なしに光っています。ただ昼は、太陽の明るさに負けて緑色の光を感じる事はありません。周りを黒い布などでおおってやると光を確認できます。

 初めて八丈島で見た時は、多くの先生方と一緒だったので迷うことなく多くの種類を観察できましたが、その後に1人で森で探すようになると、明るい内に光るきのこを探して、光るはずだと暗くなるまで待っていても光らず、空振りになることが数え切れないほどありました。それだけに闇夜の森に浮かぶように光るきのこに出会えた時の感動はひとしおです。そのワクワクを求めて、腰に熊よけの鈴を鳴らしながら夜の森を歩いています。

 残念な事に日本の光るきのこたちは毒があったりして人間は食べられない種類です。だから食べるために「きのこ狩り」をする人たちには採られないので、観察するには都合が良いのかもしれません。

 昼の森を歩くと光らない様々なきのこもあり、立ち枯れた木や落ちた枝などから生えていて、大小のきのこが養分を分解しながら枯れた木を土に還して栄養の循環をしています。きのこは、カビやさまざまなばい菌の仲間の「菌類」です。「アンパンマン」の作者のやなせたかしさんが「役を終えた命を大地の栄養に返す大きな役割が菌類にはあり、もしバイキンマンやドキンちゃんたち菌類がいないと世界は死体だらけになるから、この世に無駄な存在は無くみんな地球の大切な仲間なんだよ。」とお話しされていた言葉に、きのこたちの役割を思い出します。

 ブナ林では倒れた大木のあとにブナの若葉が芽吹いて、次の世代にバトンタッチして森は保たれていくものです。しかしここ数年、四国の森では野生の鹿が増えすぎて様々な草木を食べ尽くし、ブナの苗木も育たず土砂崩れなども起こし、温暖化とあわせてブナ林の減少が心配されています。森はたくさんの雨を受け止め川を育み、水と山の養分を海に運んで循環させる豊かな自然の原点です。本来の様々な生き物たちがバランス良く暮らしていた日本の自然の循環のサイクルについて、私たち人間はどうかかわっていけば良いのか考えてみたいものです。



宮武健仁

1966年大阪生まれ。徳島育ち。紀伊半島に続き郷里の吉野川で水をテーマとして撮り歩く。2009年に桜島の噴火を見て以来、大地のマグマの「赤い火」と火山風景や、世界有数と言われる光る生き物たちが作り出す光景「地上の光」を求めて夜の撮影に特に注力中。地球の活動が生み出した特徴的な風景や、姿を変えつつ循環する命の水の姿を求め全国を旅する。最近の写真集に「生きている大地『桜島』」(パイインターナショナル)、『Shine-命の輝き』(青菁社)などがある。「たくさんのふしぎ」は『桜島の赤い火』(2013年1月号)、『川のホタル 森のホタル』(2015年6月号)に続き3作目。


■「たくさんのふしぎ」のご購入方法は?

①全国の書店さんでお買い求めいただけます(お取り寄せとなる場合もあります)。②amazon、楽天ブックスなどのウェブ書店さんでもご購入いただけます。(品切れになっていたり定価より高くなっていることがありますが、小社には在庫がありますので、近くの書店さんにご注文頂ければ幸いです)

③定期購読についてはこちらをご覧ください。

7月号『沈没船はタイムカプセル』作者のことば

 

沈没船の探しかた                

佐々木ランディ 

本文では沈没船から読み解く様々な歴史を紹介することに専念し、沈没船を調べることって面白い! と思ってもらえることを心掛けました。ここでは水中遺跡をどうやって見つけて調べるかについて紹介します。

海の中は、綺麗なところばかりではありません…遺跡のある場所の多くは、20センチ先も見えればよいほう。では、どうやって海の中を見るのか。「音」を使います。いわゆる音波(ソナー)です。やまびこの原理で、音を出して、その音が反射して戻ってくるまでの時間で障害物までの距離を測ります。遺跡を探すには、ソナー装置を船に取り付けて、映し出された海底面の状況を観察します。

ソナーを取り付けている著者

しかし通常のソナーでは、砂の下に埋まっているモノを見つけることはできません。海底面よりも下にあるモノを探すには、サブボトム・プロファイラという特殊な装置を使います。強い音波を海底面に向けて使うことで、海底面の下の堆積状況を見ることができます。例えば、中身のしっかり詰まったおいしいスイカを見分けるため、コンコンとスイカをたたいたことはありますか? 中が詰まっているか、スカスカなのか、音で判断できますね。それと同じ原理を利用しています。そのほかにも、磁気探査機や金属探知機を使って、砂の中に鉄や銅などの金属が埋まっているか探すこともできます。

ソナーで撮影された沈没船

提供:Klein Marine Systems, Inc. / (株)ハイドロシステム開発 - Klein 4K-SVY

考古学者って、最先端の技術を駆使していつも沈没船を探しているように思いますよね? でも、やみくもに海の中を調べるわけではありません。一つは、開発に伴う調査です。海外では、洋上風力発電など海洋開発工事で遺跡が壊されないよう、工事を行う前に海底面を調べることが義務となっています。これにより、数万件の遺跡が確認されています。また、漁師さんやダイバーさんなど、日ごろから海とかかわりのある人への聞き込み調査も行っています。魚の網に壺などがひっかかることが時々ありますが、沈没船が近くにある可能性があります。海で何かを拾ったら、報告してもらうことが歴史発見のカギとなります。

例えば、韓国の新安船。この遺跡は漁師が発見しています。漁師の弟が、兄の家を訪ねたところ、犬のエサのお皿が高級品であることにビックリ! お兄さんの話では、海で拾ったと。学校の教師だった弟は、沈没船があると思い地元の役場に連絡しました。そこから大発見が生まれました。ケーブゲラドニアやウルブルン沈没船も、似たように漁師さんによって見つかっています。実は、考古学者が発見した水中遺跡はほとんどありません。

水中遺跡があるかもしれない! そう考える人がたくさんいれば、それだけ水中遺跡発見の可能性が高まります。水中考古学者の仕事は、そのような人が見つけた遺跡に価値を与えること。多くの人に水中遺跡の存在を知って欲しいといつも思っています。それが、歴史を動かす大発見へとつながる最初の一歩となるからです。次の遺跡を発見するのはあなたかもしれません。 



■ 佐々木ランディ

1976年生まれ、神奈川県出身。高校卒業後、渡米し考古学を学ぶ。テキサスA&M大学大学院にて博士号(人類学部海事考古学)取得。帝京大学文化財研究所准教授、一般社団法人うみの考古学ラボ代表理事。主な著書に、『水中考古学:地球最後のフロンティア』(エクスナレッジ)、『沈没船が教える世界史』(メディアファクトリー新書)など。


■「たくさんのふしぎ」のご購入方法は?

①全国の書店さんでお買い求めいただけます(お取り寄せとなる場合もあります)。

②amazon、楽天ブックスなどのウェブ書店さんでもご購入いただけます。(品切れになっていたり定価より高くなっていることがありますが、小社には在庫がありますので、近くの書店さんにご注文頂ければ幸いです)

③定期購読についてはこちらをご覧ください。