2024年6月3日月曜日

7月号『風が描く絵 鳥取砂丘』作者のことば

ふるさとに目を向けて 

水本俊也

  ぼくは4歳から高校を卒業するまでの15年間を、鳥取で過ごしました。進学を機に、故郷である鳥取を離れました。在学中の中国留学を経て、日本国内やアジアの国々を旅するようになりました。1999年4月、世界中を巡るクルーズ客船専属のカメラマンになり、3年後に独立。写真家としてのキャリアをスタートしました。これまで南極や北極圏、ツバルなど僻地を含めた100を超える国や地域を訪れてきました。2011年3月に発生した東日本大震災が転機となって、世界の中の日本、日本の中の鳥取に目が向くようになり、鳥取での撮影やプログラム開催、アート事業への取り組みを重ねてきました。中国地方最高峰の大山など、山や海に囲まれた大自然、里山に暮らす人々、空高く、空気の澄む鳥取の何気ない日常をこれまで以上に愛おしく感じるようになりました。その中で、幼い頃によく行った鳥取砂丘に強い関心を抱くようになりました。 

 鳥取砂丘は、訪れるたびにいろいろな絵を見せてくれます。まだらもようにしまもよう、海底を彷彿とさせるなみもよう。流れる風に加えて、太陽が砂の陰影を映し出し、複雑な幾何学もようをつくり出します。朝昼夜で異なる自然美となって目の前にあらわれます。まるで砂には見えないもようもあり、ある写真(14ページ上)では縞鋼板のように見えます。これは二方向からの風でつくられた風紋が合わさったものだということです。同じページの下の写真は木目にそっくりです。これは砂丘にたまった砂の構造が反映したものだそうです。

 ぼくは子どもたち一人一人にカメラを持ってもらい、鳥取砂丘を自由に撮影してもらう写真プログラムを開催しています。砂しかない砂丘でも、参加者の子どもたちは鳥取砂丘をいろいろな角度から撮影してくれます。鳥取砂丘を訪れた人の数だけ、発見があることでしょう。みなさんもいつか、自分だけの絵を探しに鳥取砂丘を訪れてくれたら嬉しいです。 




■ 水本俊也(みずもと しゅんや)文・写真
写真家。鳥取県八頭町出身、神奈川県横浜市在住。公益社団法人日本写真家協会会員。長年、全国の小中学校や高校にて写真講師を務め、教育事業に携わる。近年は和紙と写真をかけ合わせた作品制作を行い、アートコーディネーターとしての一面もあわせ持つ。2013年からは「小鳥の家族」という鳥取砂丘をはじめとした自然の中で家族写真を撮影するプログラムを開始。家族の肖像を和紙作品で発表するとともに、砂の上に敷いたマットの上で寝袋に包まり、鳥取砂丘で星空を眺めながら夜を過ごし、朝を迎えるというイベントを毎夏開催している。

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