日本は超深海の国
蒲生俊敬
日本は海に囲まれた国です。海のすぐ近くに住む人は、毎日潮の香りをかぎ、海風に吹かれているのかな。ふだん海から遠い内陸の人でも、テレビ番組などを通じて、頻繁に海の映像や話題に接することができるでしょう。
『超深海への旅』に登場する二人の小学生も、タイヘイさんは神奈川県、ミウさんは長野県と、海に近かったり遠かったり。しかし二人とも海が大好きで、海のことなら何でも詳しく知りたいと思っています。
話は飛びますが、海に接する国はみな、国際的な取り決めで「排他的経済水域(EEZ)」を持っています。海岸線のあたりから沖へ200海里(約370km)以内の海を優先的に管轄し、調査したり利用したりできるのです。日本のEEZ総面積は447万平方kmもあり、これは世界の国々の中で6番目の広さです。国土の面積(約38万平方km)が世界62位であることを思うと、日本がいかに海の国であるか納得できますね。
そして日本は、とりわけ深海と縁が深いのです。はて、どういうことか? 陸は平面ですが、海には深さがあります。そこでEEZを面積でなく体積、つまりどのくらいの量の海水がそこにあるのかで比べてみると、日本は世界の第4位に上昇します。深いんですね、日本の海は。さらに話を6000mより深い「超深海」に限ってみると、日本のEEZ内にある超深海水の量は、なんと世界のトップです。これは日本海溝や伊豆小笠原海溝など、世界の代表的な海溝がEEZに含まれているからに他なりません。
日本には、世界に誇る有人潜水調査船「しんかい6500」(定員3名、海洋研究開発機構が運航)がありますが、潜航できるのは深さ6500mまで。日本近海にある1万mクラスの海溝の底がどうなっているのか、どんな生物がいるのか、残念ながらまだほとんど分かっていないのです。日本ほど超深海の研究に向いた国はありません。これからは無人探査機の時代かもしれませんが、ロボットの目は人間の肉眼や心眼を超えられるでしょうか。「ハデス12000」のような有人潜水船が、今後ぜひ実現するよう期待したいですね。
作者紹介
■ 蒲生俊敬(がもう としたか)
1952年、長野県上田市生まれ。東京大学理学部化学科卒業。大学院で理学博士の学位を取得し、東京大学海洋研究所(のち大気海洋研究所)において、深層水の循環、海底温泉、海洋環境の変化などについて研究。研究船上で1740日間を過ごし、深海潜水船に15回乗船。現在、東京大学名誉教授。著書に『日本海のはなし』(たくさんのふしぎ2019年5月号)、『なぞとき深海1万メートル』(窪川かおると共著、講談社)など。
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