今朝、東京の外濠公園。土手に咲くカラシナのまわりをモンシロチョウがひらひら飛んでおりました。これまでは、ああモンシロチョウがおるなあ、くらいしか思いませんでした。しかし、今は違います。なぜなら、たくさんのふしぎ6月号、『まぼろし色のモンシロチョウ 翅にかくされた進化のなぞ』(小原嘉明 文/石森愛彦 絵)を担当したからです。
上のほうにはしっかり東京のモンシロの姿が |
モンシロチョウはオスとメスをどうやって見わけているのか知っていますか? 答えは翅の色。でもそれは人間には見えない紫外色なのです。さらに調べていくと、日本と違い、ヨーロッパのモンシロチョウの翅には紫外色がないことがわかってきました。いったいなぜ? 身近なモンシロチョウの翅に隠された進化のなぞにせまります。
「モンシロチョウはメスの翅だけに紫外色がふくまれている。モンシロチョウのオスは交尾相手のメスをその色で見わけている」。ここまでのことは子ども向けの昆虫図鑑にも出ていますし、インターネットで検索をすれば容易に知ることができます。もともとこれを解き明かしたのが、本作の著者であり、40年以上、昆虫を研究されてきた小原嘉明さんでした。
しかし、小原さんの研究はそこで終わっていません。さらに調べていくと、モンシロチョウが最初に現れたヨーロッパでは、モンシロチョウのメスの翅には紫外色がないことがわかったのです。では、イギリスのオスはどうやってメスを見わけるのか、ヨーロッパから日本へどのようにしてモンシロチョウはやってきたのか、そもそもなぜメスの翅に紫外色がふくまれるようになったのか、本作ではモンシロチョウの翅に隠された謎を解き明かしていきます。
さらに、この絵本はモンシロチョウの翅にまつわる未解明の謎で締めくくられています。それは、モンシロチョウの名前の由来にもなってる黒い斑紋です。斑紋のないモンシロチョウがいたり、2つのものがいたり、斑紋の個体差が大きいのです。どうしてこうなっているのか。小原さんはそれがもしかしたら「中立進化」したものではないかと書いています。もしそれを証明することができれば、世界的な大発見になるとも言います。40年以上、昆虫を研究してきた小原さんならではの言葉です。身近な昆虫でも、わかっていないことがたくさんあります。子どもたちに未知なるものへの好奇心を持ち続けてほしいとの思いから、これからの進化生物学で重要な概念になっていくであろう「中立進化」を盛り込みました。
絵を担当したのは石森愛彦氏です。小原氏とのコンビでの絵本は、『暗闇の釣り師 グローワーム』(たくさんのふしぎ2015年1月号)につづき2作目です。石森氏は、大の虫好きです。小原さんのテキストをそのまま絵にするだけではなく、テキストには書かれていない研究のこぼれ話や、モンシロチョウ観察のポイントなども盛り込んで、子どもたちが親しみやすい作品に仕上げてくださいました。
巻末付録の「ふしぎ新聞」の「作者のことば」のなかで、研究者になりたい子どもたちにむけて、小原さんはこんなことを書かれています。
「私は皆さんが、今関心を持っていることがあるのなら、そしてその謎を知りたいと思うのであれば、それがどんなに子供じみているとか、あるいは「何の役に立つの?」と言われようとも気にする必要はありません。知りたいことがあったら、何でもやってみてください。お父さんやお母さんに「なぜ? どうして?」と執拗に問いかけて困らせる、その好奇心を失わないでください。その科学的好奇心を持っていることは、研究者であることのもっとも大事な条件です。その意味で皆さんは、科学者あるいは研究者なのです。」
■「たくさんのふしぎ」のご購入方法はこちらです
①全国の書店さんでお買い求めいただけます(お取り寄せとなる場合もあります)。
②ウェブ書店さんでもご購入いただけます。
③定期購読についてはこちらをご覧ください。
K
0 件のコメント:
コメントを投稿