コケが開く新しい世界
田中美穂
わたしの開いている古本屋には実体顕微鏡を置いていて、 ときどき、 コケについて尋ねに来られたお客さんに覗いてもらうことがありま す。実体顕微鏡とはルーペの王様のようなもので、 コケでも石でも昆虫でも、そのままの姿を数倍~ 数十倍に拡大して観察することができるのです。
数種類のコケを用意して、それぞれ見てみると、 葉の先がくるんとカールしているもの、透明感のあるもの、 不透明で分厚いもの、 茎と葉の境目あたりにびっしりと無性芽をつけたものなど、 ずいぶん違いがあるのがわかります。多くの人は、 コケにも葉や茎があることに、まず驚くようです。
例えばそうやって、もうすっかり大人になった人たちが、「わあ、
物理学者で、漱石門下の随筆家でもある寺田寅彦が、「
これは手のひらにおさまるような、
以前、
山の世界、木々の世界、猫の世界、鳥の世界、昆虫の世界。
田中美穂
1972年岡山県倉敷市生まれ。同市内の古本屋「蟲文庫」店主。 著書に『苔とあるく』『亀のひみつ』『星とくらす』(以上、 WAVE出版)『ときめくコケ図鑑』(山と溪谷社)『 わたしの小さな古本屋』(ちくま文庫)、共著に『本の虫の本』( 創元社)、編著に『胞子文学名作選』(港の人)がある。
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