2015年7月28日火曜日

東京カタツムリたちの、楽園大冒険


たくさんのふしぎ9月号は、『カタツムリ 小笠原へ』 (千葉聡 文・コマツシンヤ 絵)です。

「はるか遠くの島にカタツムリの楽園があるんだって。
300万年前に海を渡ったご先祖さまの子孫がくらしているらしいよ……」。

そうきいた東京のカタツムリたちが1000キロ離れた太平洋上の小笠原諸島へやってきた。
そこは、天敵も少なく緑と湿度にあふれるすばらしい土地。
120種をこえる様々なカタツムリがくらしていた。
のろくて、慎重、乾燥にも弱いカタツムリが
いかに海を渡り大繁栄するに至ったのか、大冒険のはじまり

ふだん私たちが目にするカタツムリは、臆病で雨のとき以外はじっと物陰にかくれ、動きもとにかくゆっくり……。愛らしい生きものですが、子どもたちにとっては、カブトムシやトンボといったスターたちに比べ冴えない印象の生きものかもしれません。


ところが、そのカタツムリが、小笠原諸島ではほかの生物たちより群を抜き大繁栄している、という新聞記事を読み興味をもちました。

6年前、小笠原諸島は世界自然遺産に登録されたばかりで、その登録の筆頭理由にあげられたカタツムリの存在が注目されたようでした。また、近年の研究により、小笠原のカタツムリのなかでも特に目立って繁栄しているカタマイマイのなかまの祖先は、小笠原から1000キロも離れた日本本州にルーツがあることがあきらかになっていました。

小笠原母島乳房山山頂より堺が岳をのぞむ

記事を読んで以来、気になったのは、どうしてあのカタツムリが1000キロもの海を渡れたのか、そして、なぜそんなに小笠原で繁栄することになったのか、ということでした。2つの疑問を抱いて、記事を監修されていた東北大学大学院の千葉聡さんに会いにゆきました。千葉さんは、カタツムのろさ、移動能力の乏しさが、小笠原での大繁栄の鍵になっていたこと、そして、小笠原のカタツムリの進化は今も目に見えるかたちでまさに進行中であること、を話してくださいました。

小笠原は亜熱帯気候に属し、本州とは異なる独自の動植物の環境を保持しています。絵を担当されたコマツシンヤさんにはぜひ一度彼の地に立っていただきたい、とお連れすることになりました。

船にゆられること26時間。たどりついた6月の小笠原はすでに夏。むっとする湿気と暑さでした。この湿度がカタツムリたちを育んだのかと話しながら、カタツムリたちがすむ森の奥深くへ……。

研究調査に同行させていただいたため、取材は
起伏のあるジャングルを前へ前へ休むことなく進む
容赦のないものになりました

堺が岳山頂付近。
高い湿度で、視界が曇ってしまう

ぬかるむ斜面でのザイルをつかっての登攀、山あり谷あり……。コマツさんが、その冒険の様子もあますことなく伝えてくださっています。どんなカタツムリたちに出会えたのか、続きは本編でお楽しみください!

『カタツムリ 小笠原へ』 は、8月3日発売です。

(J)

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